日光の男千里眼と神隠し
どんな伝承か
日光に千里眼を持つ男がいた。その生い立ちはひどく数奇なもので、六歳のときにいわゆる神隠しに遭い、二十一、二歳になった年の春、ふらりと戻ってきたのだという。十数年ものあいだ山中にこもっていたため世間の様子には疎かったが、長い山籠りの間に千里眼の術を身につけたと伝わる。米飯は口にせず、木の実や蕎麦粉の類を常食とし、今でも折々一週間ほど山にこもる。人が金品を与えようとしても決して受け取らず、蝋燭だけは受け取った。理由を尋ねると、山籠りの際に暗くて困るので灯りに使うのだと答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年))
『心霊哲学の現状』は、高橋五郎が大正八年に著した心霊研究の概説書である。英国のロッジが戦死した子レイモンドの霊と交わした冥界通信をはじめ、欧米の交霊術と霊媒の実例を訳して紹介し、日本の催眠術と千里眼の流行、御船千鶴子・長尾郁子の事件、霊光や念写までを論じる。篇と章に分け、心霊哲学とキリスト教、クリスチャン・サイエンス、淘宮術との関係や、太霊道など国内の霊術諸派も取り上げ、ところどころに評註を添える。