カルテがたどる狐憑きの衰え
どんな伝承か
藤森英之の論文「松沢病院における宗教妄想の時代的変遷」は、東京府立巣鴨病院と松沢病院に残る入院患者のカルテから十九種類の妄想を拾い、明治から昭和にかけての推移を統計で示したものである。第二次大戦の前は被害妄想・誇大妄想・被毒妄想が上位を占め、戦後になって関係妄想が現れた。憑依妄想は明治期には五位、大正期には九位で、その後は次第に順位を下げていく。憑依の主題はどの時代も狐がもっとも多いが、戦前と戦後を比べれば減っており、それでも完全には消えていない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が一九八九年に著した近代日本の民衆の心性をめぐる論考である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍や出口なおの神がかり、祖先教と靖国の霊魂の管理を、新聞記事や医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章「近代日本と霊魂の行方」を置き、あとがきで結ぶ。