鏡沼の大蛇を撃った猟師
どんな伝承か
鏡沼は水底がよどんで青黒く、まわりを小高い丘が囲んでさざ波一つ立たない。ある時、南倉沢の猟師が山へ猟に出たが兎一匹も獲れず、帰る途中に沼のほとりを通ると、沼にさし出た木の股に白いものが見えた。よい獲物とねらいを定め、女の裸身だと気づいた時にはすでに引き金を引いていた。弾が当たるとその姿はかき消え、みるみる大蛇と化して沼へ逃げ失せた。たちまちあたりは闇に包まれ、なまぐさい霧で視界がまったくきかなくなり、猟師は三日三晩歩き疲れて村から遠く離れた幽谷の小屋にたどり着いた。その後に生まれた子は毛髪も体毛もなく、しかし馬を荷ごと担いで峠を越えるほどの力を持っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史・自治体史(民俗))
福島県南会津郡『下郷町史 第5巻(民俗編)』所収の伝説。会津・下郷町に伝わる自然伝説・歴史伝説・信仰伝説を収録する。