鏡沼へ帰った呉服屋の嫁
どんな伝承か
いつのころからか、下野国那須の呉服屋が鏡沼のほとりを通りかかり、オセコが宮の近くまで来ると、美しい娘が腰をかけて休んでいた。声をかけると自分もその方へ行くので連れて行ってほしいと頼まれ、道々ともに歩いてアンザの呉服店よろづ屋に着いた。娘はそのまま泊まり、縁あって呉服屋の嫁におさまる。やがて出産の日、二十一日間は産屋を見ないでほしいと固く言われたが、夫が戸の隙間から覗くと、八畳の間いっぱいになった大蛇が可愛い男の子をあやしていた。正体を見破られた娘は、子が泣くときはこれをなめさせよと玩具のようなものを置き、涙ながらに鏡沼へ帰っていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。