大磯の宿で的中した十三人の客
どんな伝承か
著者は卜筮が当たるかと問われると、当たるも八卦、当たらぬも八卦と答えている。ある年の五月ごろ、著作の草稿を書くため相州大磯の松林館に泊まっていたが、急に東京から用事を言ってきたので、今晩帰ると宿の女主人に告げた。なぜ急にと聞かれ、妖怪研究のために筮竹で占ってみたら、今夜この宿に大勢の客が押しかけて騒がしくなると出たので帰るのだと答え、人数を問われて十三人と言っておいた。するとその晩、本当に十三人の客が東京から押しかけて大騒ぎしたそうで、これは当たるも八卦のほうだったという。
原典より
しかるにその晩は予言のごとく十三人の客が東京より押し込んで大層騒ぎたてたそうだ。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。