熊手で金をかき集める浅草の酉の市
どんな伝承か
井上円了が説く迷信の一例。祈禱を専門とする神社仏閣は多く、その多くが病気災難の魔除けや金もうけの祈願を扱う。東京の浅草には大鷲神社があり、毎年十一月の酉の日に祭礼が開かれる。参詣者は必ず熊手を買って帰るが、それは熊手で人の金をさらえ取りたいという願いを込めたもので、鷲の神の力を借りて金をつかみ取る意味だという。世間では不景気の時ほど御祈禱が盛んになるが、それは神仏に頼んで金もうけをさせてもらいたいという迷信があるからだと円了は論じている。
原典より
ここに参詣するものは各クマデを買って帰ることになっている。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。