一夜で油揚を食べる上山の稲荷
どんな伝承か
羽前の上の山温泉に行ったとき、旅館の下女の案内で名高い稲荷に参詣してみた。その堂内には油揚が山のように積み立てられて神前に供えてある。いずれも参詣者が持って来て祈願したものである。そこで下女に、あの沢山の油揚は社守の食用になるのであろうと問うと、下女は、あの油揚はみな稲荷様が一夜のうちに召し上がってしまいますと答えた。まさかそうではあるまいと言っても、下女はほんとうでありますと言い張った。この程度の知識では迷信も多くなるはずだ、と記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。