上奏文を懐に桜田門へ突入した少年
どんな伝承か
明治三十六年十一月十九日、田中守平は記念の写真を撮ったあと、天皇への上奏文を懐に桜田門へ向かった。天皇の入門を待ち構え、憂国の少年田中守平が謹んで陛下に奏し奉る、と絶叫して隊列へ突入する。たちまち取り押さえられ、麹町警察署へ連行されて不敬罪の詮議を受けた。この事件は全国を驚かせ、以後彼は危険人物として当局の監視下に置かれることになる。上奏文の筋が通っていたことと世論の同情から処分は始末書一通で済んだが、当局は誇大妄想の烙印を押して郷里へ送還した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。