盗んだ熊手をかつぎ回る少年
どんな伝承か
『お酉さまの熊手は値切るか盗め』という俗信があり、埼玉県秩父市で正月一二、一三日に開かれるダルマ市にも盗人ダルマ市の異名がある。お酉さまのあと、東京都下八王子市の一少年が、市内新町の中村家が買って庭先に置いた熊手を夜中に盗み、かつぎ回っているうち不審尋問にひっかかって御用になった事件があった。昭和三三年のことである。秩父の盗人市でも参拝者は商人のすきをうかがってかっぱらい、見つかれば代金を払うが、うまく盗めれば買ったのよりずっと縁起がよいと喜ぶ風習だという。縁起物は神の恩寵のこもった物で、気づかれずに自分の物にできたのは天からの授かり物だということになるのであろう。
原典より
お酉さまのあと、東京都下八王子市の一少年が、市内新町の中村家で買って庭先に置いたのを夜中に盗んで、かつぎ回っているうち不審尋問にひっかかって御用になった事件があった(昭和三三年)。—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。