番小屋でスイカを食べていたツル
どんな伝承か
昭和二十七、八年の夏祭りの夜、千葉県柏市藤ヶ谷の染谷平兵衛は、同年配の若い者何人かと夜遅くまで外で遊んだ。家では皆が寝ている時刻になり、暑くもあったので、自家のスイカ畑のわきに建てた盗難見張りの番小屋で寝ようということになった。小屋へ入って灯りをつけると、中にツルこと矢田鶴吉が座っていた。手には食いかけのスイカを持ち、横には盗んだスイカが何個か置いてある。互いに一言も発せぬまま気まずい空気が流れ、やがて鶴吉は黙って立ち上がり、そのまま出ていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。