覗きに来た娘たちの鎌を投げたシマ
どんな伝承か
昭和十一、二年ごろ、千葉県柏市藤ヶ谷の相馬せんら同じ年ごろの娘四、五人が、馬捨て場に近い田んぼの畔で草刈りを終えたあと、台地の上の天幕部落をのぞきに行った。急坂とは別の道を上がり、そばの雑木林で薪を拾うふりをしながらテント群を観察していると、どこからともなくシマが現れた。「何だ、お前ら。おらたちのことを見にきたんだんべ」と切り裂くように言うなり、「帰れ、帰れ」と叫びつつ、娘たちが置いていた草刈り鎌や籠を台地の端から斜面の下へ次々と放り投げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。