蛇ノ島の弁天となった娘
どんな伝承か
盛岡の北方十町ばかり、上北上川の中州に蛇ノ島という所がある。昔ここに一人の美しい娘があり、夏の夕暮れに野良から帰って森の下の川岸で足を洗っていると、近くの木陰で釣りをしていた年若い美男と言葉を交わし、翌日も逢う約束をした。娘は毎日待ったが男は二度と来ず、秋冬を過ぎ、吹雪の烈しい夜に凍死した。春、岸に若草の生える頃、赤い小蛇が現れて毎日その場を離れないので、村人は娘の化身だろうと小さな祠を建て、弁天として祭ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。