座頭泣かせの松林で笑う白衣の女
どんな伝承か
著者自身の体験である。四、五年前、娘を花巻の病院に入院させていたので、週に二度ほど見舞いに通っていた。ある夏の真夜中、一時か二時頃に八幡山の麓の道を通ると、狐の難所と言われる座頭泣かせという松林の下で、ひょっこり若い女に出会った。二十五、六の夜目にも美しい女で、すれ違ってから一間ほど先で立ち止まり、振り返って笑っている。歩き出すと小声で何か言って忍び笑いをし、村の娘には似合わない白い長い着物姿であったという。
原典より
座頭泣かせと云ふ松林の下、此所は狐の難所であると謂ふ所で、ひよっこりと私は若い女に出会した。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。