川向こうで手招きする白手拭いの女
どんな伝承か
語り手の父の話。三丁目の竹屋という飲み屋で一杯やり、天ぷらの折詰を土産に提げて帰った。三丁目の駐在所の横から新田へ抜ける道は、当時は家もまばらで稲田と澄んだ川ばかりで、三丁目の外れの馬頭観音のあたりは松や椎や笹が川に覆いかぶさっていた。そこまで来ると、川向こうで白い手拭いを頭からかけた女が手招きをする。川に入って渡るといなくなり、振り返るとまた向こうで手招きする。行ったり来たりして一晩じゅう川の中を歩き、寒さで気づくと夜が明けかけていた。着物は藁塚にかけてあり、折詰はすっかり無くなっていたという。
原典より
「泣くと、狐来るぞ!ムジナ来るぞ」なんてね、お爺さんから聞いた事ありますよ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。