筌を仕掛けた山道に転がる火の玉狐
どんな伝承か
昔、ドジョウを捕るのに筌を使った。夕方、田んぼの水の流れる所へ仕掛けておき、朝は四時に起きて取りに行くのである。その道は高い所を通る山道で、向こうから一抱えもある大きな火の玉が、玉転がしの玉のようにゴロゴロと転がって来ることがあった。よけようとすると、すっかり消えてしまう。筌の中のドジョウを食おうとした狐が、子供を近寄らせまいとして驚かしたのだろうという。ほかに月が二つ上がるのや、狐の行列もよく見たと語られる。
原典より
私ら子供に言うと、笑われちゃうけど、よく火の玉転がって来たなんてね。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。