シロミ山の麓で見た無人の大館
どんな伝承か
シロミ山の東南の麓、金沢という村の某という若者が山へ入ると、見たことも聞いたこともないほど大きな構えの館に行き当たった。大きな黒門を入ると鶏が多くおり、立派な厩には駿馬が六、七匹いた。裏へ回ると炉には火が燃え、常居には炭火がおこり、茶の間には大桶、座敷には朱の膳椀が並び、次の間には金屏風と唐銅火鉢があるのに、人は一人もいない。見て歩くうちに恐ろしくなって逃げ帰った。この男は少し足りない性質で、和野の善右衛門の家へ婿に来たが、灰を一箇所に山積みにして離縁になったという。同じ隠れ里の話は川や沼にもあるとして、和賀の例が続く。
原典より
昔、橋野川を神様が石の舟に乗って川筋を下って来た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。