岩山家の散切頭の男児
どんな伝承か
陸中東磐井郡八沢村の岩山という家には、昔からザシキワラシがいるといわれている。この家の現在の主人の母が十七、八の頃というから、今から六十年ばかり前のことである。ある雨の降る薄暗い夕方、縁側に面した座敷で一人機を織っていると、縁側の外を五、六歳位の散切頭の男の児が一人、しとしとと歩いて来る。家の親類の子だろうと思って声をかけようとしたところ、その児はたちまち戸袋の陰に入ったまま見えなくなった。驚いて家中を探したが誰もいなかった。これはザシキワラシだろうということになった。この家は今でもかなりの物持ちである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。