笠の礼に米を運ぶ石地蔵
どんな伝承か
元朝を前にした夜半過ぎ、どこかで橇を引く声がした。夫婦は、橇引きの声がするから夜が明けたのだろう、しかし元朝の朝に橇を引くとは不思議だと語り合っていた。その声は「よういさ、よういさ」と家の門口までやって来て、どさりと大きな物を下ろす音がした。夫が誰だと問うと、自分は近所の石地蔵だ、宵に笠を貰った礼に米と金を届けに来たと答え、吹雪の中をのこのこと帰って行った。明くる朝、玄関には米俵三俵と黄金の入った大きな袋が置かれており、その蔭で貧しい夫婦は長者となって一生楽に暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。