伐屑がつく松と巨鰻の化けた岩
どんな伝承か
上閉伊郡栗橋村字古里に松があり、年々枝葉が繁って付近の耕地を覆い、笛吹峠や和山峠からも見えるほどであった。持ち主が伐り始めたが、翌朝には伐屑がみな元木に付いて切り目がふさがり、三十日余り繰り返しても同じであった。困り果てていると夢に老翁が現れ、伐屑を毎夕方焼き捨てれば成就すると告げた。その通りにするとついに倒れた。幹で丸木舟を造って鵜住居湾に浮かべたが重くて使えず、片岸浜に繋いだまま腐り、ある夜のうちに姿を消した。折しも橋野川の溜場の深みに怪しい物が潜み、漁夫が椏で突くと川面が血に染まり、その漁夫は気が狂った。やがて大洪水の後、川口に黒い奇岩が現れ、里人はあの怪物の化身だと言い囃したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。