東禅寺の飛んだ杖と鳴いた大釜
どんな伝承か
閉伊郡附馬牛村には東禅寺という名高い古寺があった。開山は無尽和尚といい、徳の秀れた人であったといわれる。その人が持っていた杖は近年まで残っていたが、寺が焼けるときどこかへ飛んで行ってしまった。またこの和尚の在世中に数百人の学徒へ飯を炊いて食わせた大釜があり、火事の折に飛び出そうとして大廊下をごろごろ転げ回り、大きな音を立てて鳴いたが、あまりに重すぎて飛ぶことはできず、今も残っている。もう一つの釜は盛岡へ連れて行かれる際、行きたくないと大喚きを立てながら、村の字大洞という所の淵へ滑り込んでしまった。今もその淵に沈んでいるといい、これは先の釜と夫婦淵であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。