雁汁の鍋から返事をした爺
どんな伝承か
雁取爺の話には続きがある。隣の爺を羨んだ上の爺は、雪隠の屋根から雁に灰を撒くつもりが言い間違えて自分の目に灰を入れ、屋根から転げ落ちた。下で棒を構えて待っていた婆と嫁は、落ちてきたものを雁だと思って叩き殺し、刻んで大鍋で雁汁に煮た。爺も呼ぼうと声をかけると鍋の中から返事があり、蓋を取ると爺の睾丸が浮いていた。婆はそれを盆に載せて戸棚にしまい医者を呼びに走ったが、留守の間に孫たちが、火に気をつけろとしゃべる気味の悪い物を雪隠や大根畑へ投げ捨て、婆は戻るたびに呼んで返事を頼りに拾い戻した。ようやく医者を連れ帰って盆の物を差し出すと、医者は珍しいお菓子だと言って爺を一口に食べてしまったという。
原典より
アレやと驚いて鍋の蓋を取つて見ると、ぷくンと爺様の睾丸が浮んで居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。