命数の帳面に八を足した三人の僧
どんな伝承か
老夫婦の一人娘が十八になり、婿を探していた。ある日、旅の老乞食が、施しをした娘の顔をつくづく見て、美しいがこの八月には親を泣かせる子だと言って去った。聞いていた父が追って問うと、乞食は、娘は八月二十四日に急病で死ぬだろうと明かし、三日前に白酒三升と盃三つと精進の肴を持たせ、目隠しをして明け六つに東へ歩かせよ、行き当たった所の三人の僧に黙って酒を注ぎ続け、尽きたら命乞いをさせよと教えた。その通りにすると、岩窟で緋の衣の三人の僧が帳面を読み、算盤を弾き、書き物をしていた。酒の礼にと帳面を調べた僧は、娘の命数が尽きるのを見て十八に八の字を書き足して八十八とし、娘は本当にその年まで生きたという。
原典より
一人は帳面を持ち上げて読み一人は算盤を弾き一人は物を一生懸命に書いて居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。