三百両で買った三つの話
どんな伝承か
貧しい家の夫が町で三年奉公し、多くの金をもらって帰路についた。途中の町に話売りがあり、一話百両だという。百両払って聞いたのは、柱の無い所で休むなという一言だけ。さらに二百両で、愛想のよすぎる宿に泊まるな、ならぬ堪忍するが堪忍と聞いて稼ぎを使い果たした。野原の岩窟で休もうとして教えを思い出し離れると、間もなく地震で岩窟が崩れた。その夜は気味悪いほど愛想のよい宿で、座敷を出たとたん釣り天窓が落ちた。家では誰も返事をせず、妻が誰かを抱いて寝ているので斬ろうとしたが、堪忍の教えで思いとどまると、夫を案じて心を病んだ母を抱いて寝かせていたのだと妻が詫び、夫婦は三つの話は安かったと喜んだという。
原典より
愛嬌よい所に泊るなと謂ふ語であつたので、是は油断ならぬと思つて其座敷から出ると、忽ちに釣天窓が堕ちて来た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。