餅を惜しんだ妻と座頭の名乗り
どんな伝承か
ある夫婦の家に座頭の坊様が宿を乞うた。その日は稲の刈り上げで水切り餅を搗いていたが、妻は餅を惜しみ、鳥類を食べないという坊様に、これは鳥餅だから出せないと言って、昼の残り飯に湯をかけて食わせた。坊様は餅が気になって眠れず、夜中に台所を探って餅瓶を見つけ、椀に八杯も平らげたうえ残りを八包みにして荷に隠し、瓶の底を抜いて夜のうちに立ち去った。翌朝、夫にとがめられた妻が追いかけて名を問うと、八杯八包み瓶の下の抜壷という坊様だと名乗った。家に戻ってみると餅は一切れもなく、瓶の底が抜けていたという。
原典より
するとよい塩梅に餅瓶があつたからしこたま食つてから其瓶の底をぶん抜いた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。