尻を鳴らす小箆と御箆大明神
どんな伝承か
或る所に大法螺吹きがあった。偽りばかり吐くので誰も相手にせず、ひどく貧乏になった。改心して村の観音堂に七日七夜籠り、世間並の真人間にしてくれと願ったが、満願の朝にも霊験はなかった。向っ腹で堂の前坂を下りて来ると、鳥居の下に赤い小箆が一丁落ちていたので拾って懐に入れた。野中で用を足し、その箆で尻を拭くと、尻がおかしな囃子で鳴り出して止まらない。よく見ると箆は片面が朱塗り、片面が黒塗りで、黒い方で撫でると鳴り音がぴたりと止んだ。町外れで雌馬の尻を鳴らしては止めて礼を受け、やがて長者の娘の病も同じ手で治して婿となり、大いに出世した。それも小箆のお蔭だというので、神に祀って御箆大明神と申し上げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。