迷い馬を呼び続けた童と馬追い鳥
どんな伝承か
ある馬放しの童が、毎日たくさんの馬を連れて山へ放牧に出ていた。ある夕方、馬を集めて帰ろうとすると一頭だけ足りない。声を張り上げて呼んでも来ず、沢を下り谷を回り峰を越えて探しても見つからなかった。主人に叱られるので手ぶらで帰るわけにもいかず、童はさらに山の奥深くへ分け入って呼び続けるうちに、とうとう力尽きて鳥になった。これが馬追い鳥で、いまも五月ごろ若葉の深山で、里の童が馬を呼ぶような声で鳴いているという。
原典より
今でも春五月頃になつて山々の若葉が伸びて来ると、深山の中で其鳥が恰度郷の童らが馬を呼ぶやうな声で啼いて居る。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。