猫に縄を引かれた婿の大根褒め
どんな伝承か
ある家が迎えた婿は少し足りないと噂され、本人も気に病んでいた。本家の振る舞いに夫婦で呼ばれたとき、嫁は、料理はきっと大根汁だから、大根は根も葉も食べられてよいものだと褒めればよいと教え、言う頃合いは腰に結んだ細縄を引いて知らせると決めた。膳に大根汁が出て嫁が縄を引くと、婿は教わった文句を口にし、一同は噂はあてにならない、たいした利口者だと感心した。ところが嫁が用足しに立った間に、縄の端に結んであった鰯を猫が見つけて何度も引っぱったので、婿は同じ文句を続けざまに唱え、すっかり地金を出してしまった。
原典より
皆は魂消て、なんだかえアニコを世間では薄馬鹿だと言ふが、本当に噂ツてものはあてにならねもんだ。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。