山男に取り返された黒髪
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どんな伝承か
山々の奥には山人が住むという。栃内村和野の佐々木嘉兵衛という人は今も七十余りで存命である。この翁が若かった頃、猟をして山奥に入ったところ、遥かな岩の上に美しい女が一人いて、長い黒髪を梳っていた。顔の色は極めて白い。不敵な男であるから直ちに銃を向けて撃ち放すと、弾に応じて倒れた。駆けつけて見ると背の高い女で、解いた黒髪はその背丈よりも長かった。後の証にしようとその髪をいささか切り取り、束ねて懐に入れて家路についたが、道中で耐え難く眠気を催し、しばらく物陰でまどろんだ。夢とうつつの境で、背の高い男が近寄って懐に手を差し入れ、その黒髪を取り返して立ち去った。山男であろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。
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