木や草が道を開けた松住権現の登山
どんな伝承か
千丈寺山の磐座に祀られる松住権現は、天狗に連れ出された人だと伝えられる。中ふみゑが亡き父から聞いたところでは、この人はふだんから夜になると誰にも知られずに千丈寺山へ登っていた。村の若者五、六人が示し合わせて物陰に潜み、確かめようとしたところ、日が暮れてしばらくした頃、家を抜け出して山へ向かう人影が見えた。追いかけると、彼ははだしのまま駆け上がっていき、行く手をふさぐ木や草がさっと左右に分かれて道を空けた。若者たちはあっという間に姿を見失い、天狗の手引きに違いないと言い合ったという。
原典より
不思議なことに、彼の行く手を遮る木や草は、サッと左右に分かれて道を開けるので、若者たちは瞬く間に彼の姿を見失ってしまい、『いかにも天狗の手引きに相違ない』と語り合ったということである。—— 兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告)
『兵庫県民俗調査報告8――伝説』は、兵庫県の民俗調査報告の一冊のうち、第10章「口頭伝承」を収めたものである。三田市の乙原・小野・尼寺・青野・末の各地区を対象に、集落の発祥や神社、廃寺、城跡にまつわる伝説、天狗に導かれたという松住大権現、狐狸の怪、狼の話などを、聞き書きと『門野氏郷土物語』などの郷土の記録から記す。伝説のあとに昔話とわらべ歌を続け、わらべ歌は地元の中学校生徒会の協力で集めた尻とり歌や羽根つき歌を載せる。