和尚を呼んだ狸の尾と水晶山の山号
どんな伝承か
むかし西念寺に「すいとん」と呼ばれる和尚がいた。どんよりした風の吹く秋の晩、夜の勤めをしていると、風にまじって「水とん、水とん」と呼ぶ声がする。振り向くと格子戸のあたりに誰かがいるようで、よく見ると隙間から差しこまれた箒のようなものが手箱に当たるたびにその音が出ていた。剛気な和尚がそっと近づいて動く太い尾をつかみ、力いっぱい引くと、外で獣が暴れて尾が根元から切れ、二声三声鳴いて逃げ去った。それは狸の尾で、以後狸は来なくなった。尾を見に村人が押しかけ、寺の山号は和尚の名から水晶山になったという。
原典より
和尚さんは、僅かな明りにすかして見ると、なんとそれは狸の尾ではないか、水とん、水とんと聞こえたのは実は狸のいたづらだったと云うことがわかった。—— 坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌)
『坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説』は、長野県坂城町の町誌上巻(自然編・民俗編)から、民俗編の数章を抜き出したものである。祟る所や神罰、ヒトダマ・狐火などの怪異、魔除け、植物の禁忌といった俗信を地区ごとの事例として番号を付けて並べ、続いて甘利さま、天田長者とほうず池、苅屋原の七不思議、貉和尚、夜泣き石など三十余りの伝説を収める。伝説の章は調査員の調査をもとに、以前の調査記録も二、三篇併せて載せる。