お膳を貸した天龍川のかわらんべ
どんな伝承か
むかしは天龍川にかわらんべ(河童)がいたという。語り手の実家である愛知県富山村では、家の前の川原にかわらんべがいて、何かあると来て手伝いをしてくれた。きれいな女の人に化けて現れたという。人寄せのときは川原のふちのそばの橋の上へ行き、膳を三十枚貸してほしいと呼ばわると、岩の上にきちんと三十枚並べて貸してくれた。用が済んで礼を言って返すと、誰にも見えないようにふちの中へ入れてしまう。このかわらんべは「たでだけはくれるな」と言っていたが、ある人が面白がって与えたところ、血の泡のようなものを吹いて流れていき、それきり膳も貸してくれなくなったという。
原典より
そうしたらそのとたん、血の泡だかなんだか吹いて流れていったって。—— 坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説
『坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説』は、天竜村坂部の民俗をまとめた民俗誌稿のうち、第十二章「口頭伝承」の一部を収めたものである。さるかに合戦、へび女房、桃太郎、花咲かじじいなどの昔話を語り手の名を添えて土地の語り口のまま記し、先途の七人塚、お万さま、天龍川のかわらんべ、早太郎のひひざる退治など落人や土地にまつわる伝説を並べる。昔話を動物昔話・本格昔話・笑話に分け、伝説、なぞと続ける。