渦を巻く両国橋周辺の自殺の名所
どんな伝承か
大正十三年の新聞に、東京に自殺の名所ができたという記事が載った。中心は両国橋のあたりで、沿岸の各警察署が水上署と組んで見張りに当たっていた。それでも人目のない真夜中を選んで飛び込むため、防ぎきれないという。身を投げるのは若い女が多く、恋愛のもつれか暮らしの行き詰まりから、発作的に思いつめる者が大半だった。この一帯は流れが速く、川底がえぐれて渦を巻き、五間の竹竿も届かぬ深みがあって、落ちれば助からないとされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。