鶴が引き留めた酒屋の長者
どんな伝承か
昔、下小浜に豪壮な邸を構え、代々酒屋を営む長者があった。この人はもと上総の生まれで、どのような訳かは分からないが、仙台地方へ移ろうと船で北へ向かった。出発に先立ち、日ごろ飼い馴らした一羽の鶴を連れて行くのは不憫と思い、大空へ放してやった。ところがこの鶴は主人の後を慕ってどこまでも追ってくる。船が小浜沖にさしかかると、鶴はいきなり陸地へ舞い下り、また急いで船へ飛び返って輪を描くことを何度も繰り返した。主人はこれはここに留まれと教えているのだと考え、意を決して下小浜へ上陸し、家を建てて酒造りを始めた。家運は日を追って栄え、ついに長者と呼ばれたという。
原典より
昔、下小浜に豪壮な邸に住まい、代々酒屋を業とする長者があった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史・自治体史(民俗)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史・自治体史(民俗))
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)』第九章所収の昔話と伝説。福島県双葉郡富岡町(震災前)に伝わる口承を採録する。