襷のまま石になった女
どんな伝承か
麓山神社がまだ山頂にあったころ、この山は女人禁制であった。村の女たちは神前を通るとき、不浄とされる体の前後を神へ向けないよう、横を向いて足早に通り抜けたという。ところがこの村に、神など信じないという気の強い女がいて、男が登ってよいのに女が登って何が悪いと言い、止める人々を振り切って蕨を採りに麓山へ入った。すると山が崩れ地が割れるほどの地鳴りと震動が起こり、女は山から跳ね飛ばされて転げ落ちた。駆けつけた村人が見ると、女は襷を掛けたまま石になっていた。人々はこれを憐れみ、折にふれて香華を手向けている。
原典より
麓山神社がまだ山頂にあった昔、お山は女人禁制だった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。