水車の下で捕まえた河童の子
どんな伝承か
約三十年前、刺鹿村から一里ほど北の字大津で、ある農家の主人が朝早く、水辺に据えてある水車を踏みに行ったところ、前日から仕掛けておいた水車の台の下に、淡黒く大きな蟇のような奇怪な動物が三匹這い込んでいた。捕らえて不思議がりながら眺めていると、通りがかりの人がそれは河童の子だと言ったので、農夫は後難を恐れて水中に放したところ、いずれも深みへ逃げて行った。親が子を連れて水車の下で遊んでいたところへ農夫が来たため、親だけが逸早く逃げ去ったのだろうと想像された。
原典より
通りが入りの人が見て、共は河童の兄であると言つたので、農夫は後難を恐れて水中に放つたら、悉く深みへ迯げて行った。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。