猿の掌に似た河童の手
どんな伝承か
『甲子夜話』の著者は、先年、自分の領地である肥前平戸の境村で、河童の手というものを見たと記している。猿の手のひらによく似て、指の節が四つあったという。この生き物は亀の類に猿をあわせたようなもので、立って歩くこともあるという。水鳥を捕る者の話では、水辺に潜んで見ていると、水際を歩いて魚や貝を取って食べ、ときに小児のように見えるという。漁師によれば、まれに網に入ることがあるが、入ると不漁になるといって嫌い、すぐに放してしまう。網ごと揚げると石のように丸まっているが、水に投げると四足と頭と尾を出して泳ぎ去るという。
原典より
予も先年領邑(肥前平戸)の境村にて、この手と云ふ物を見たり、甚だ猿の掌に似て指の節四ッありしと畳ゆ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。