漁網にかかり酒を飲まされ放された河童
どんな伝承か
刺鹿村の北にある大津で河童の子が捕まったのと同じころ、大津に隣り合う柳瀬という海辺の漁村で、海に入れた漁網に河童が一匹かかった。この土地では、河童が来ると魚を寄せるという言い伝えがあったので、漁師たちは殺さずに酒を飲ませて海へ放してやったという。著者は、肥前ではこれと反対に、河童が来ると海の魚が逃げて不漁になるといわれ、海辺の村では河童を憎んでいると付け加え、土地による言い伝えの違いを面白いことだと述べている。
原典より
また其頃大津の隣接地たる柳瀬と云ふ海岸の漁村で、海の漁網にか、つて一疋の河童が捕れたが、同地方では河童が来ると魚を寄せると云ふ傳説があるので、殺さずに酒を飲まして海に放つたさうだ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。