小松山のふもとの狐の嫁入火
どんな伝承か
石見国大田町の東北の外れに、著者の姻戚にあたる寡居の老婦人が住んでいた。夏の夜など、この老婦人はしばしば狐の嫁入り火を見るという。一昨年も二度あったといい、その火は家の裏手の水田の向こうにある小松山の麓に横一列に並んで動き、時には家の近くまで寄ってきて人をからかうような素振りを見せた後、ぱったりと消えてしまうのだという。
原典より
其火は、家の裏の水田の向ふなる加士の小松山の麓に横列に動き、時としては家の近くへもやつて来て、人をからかふやうな氣味があり、遂にはバッタリと消えるのださうな。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。