鍵屋の娘に憑いた竹松と両家の悶着
どんな伝承か
石見の大田町で大工の家に棲むとされた外道「竹松」は、その家の女房お茂と深い因縁があると見られていた。竹松が近所の鍵屋の娘にとりついて三年も悩ませたため、両家は激しくもめた。竹松の家の側は、怪しい獣がいるなら家捜しをして摘まみ出せ、名誉を傷つけるなら訴えると言い張り、鍵屋の側は、娘が自分は竹松だと口走る以上はお前の家の外道の仕業だと応じた。婿養子の主人は家に竹松がいることさえ知らないらしいと噂された。竹松が誰かを悩ませているとき、相手の家が祈祷をすると決まってお茂が頭痛に苦しむので、お茂が青い顔で鉢巻をしている日は竹松が人に憑いている日だと言われた。
原典より
竹松は育て近所の鍵屋の娘に憑いて三年間も はした時、…—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。