御斎峠で茶漬けを問うヒダルガミ
どんな伝承か
山道を歩いていると、急にひどい空腹に襲われて足が動かなくなることがある。これはヒダルガミという餓鬼が取り憑くためだという。近江の信楽の多羅尾から伊賀の西山へ抜ける道に御斎峠があり、本能寺の変の折には家康もこの峠越えに命をかけたと伝わる。ここにヒダルガミが出るのは決まって夜明け前で、旅人の目の前へ餓鬼腹をぬっと突き出し、茶漬けは食べたかと問いかける。食べたと答えたとたんに飛びかかって腹を裂き、胃に残った飯粒を食らうという。こうした害を避けるため、旅や山仕事には箸を一膳余分に持ち、弁当を少し食べ残しておくものだとされた。
原典より
山道を歩いていると、急に腹がすいて歩けなくなることがよくあった。—— 暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。