川の闇を転がる火の玉
どんな伝承か
鈴木重光の『相州内郷村話』によれば、津久井郡内郷村では、夜中に川へ漁に出ると、真っ暗な中を大きな火の玉が転がってゆくことがあった。そんなときは河原の石を洗い清め、その上に獲れた魚を供える。すると火の玉は転がるのをやめるという。投網を打ちに行けば、姿は見えないのに少し先で同じように網を打つ者の気配がし、大勢の人声や松明の火が盛んに見えるのに、行ってみると誰もいない。土地ではこれらを川天狗と呼んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。