お歯黒の歯でしか切れないフスマ
どんな伝承か
佐渡には「フスマ」という妖怪が伝わる。夜中、どこからともなく大きな風呂敷のようなものがフワリと飛んできて、人の頭をすっぽりと包んでしまうという。どれほどの名刀をもってしても切ることはできないが、鉄漿で黒く染めた歯で一度噛み切れば、たやすく切れるとされた。そのため昔はフスマへの用心として、男でも鉄漿をつける習わしがあり、近年まで佐渡では男のお歯黒が見られたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。