斬られた常元の妄魂が湧く常元虫
どんな伝承か
蒲生家の侍だった南蛇井源太左衛門は、天正の兵乱で主家を離れて無頼の徒となり、諸国で悪事を重ねた末、年老いて近江国志賀郡の別保の里に落ち着いた。人に勧められて髪を切り常元と名を改めたが、昔の悪行がもとで捕らえられ、柿の木に縛られてさらされた後に斬られた。庄屋藤吉が死骸をその柿の木の根元に葬ると、数日して塚の上に人を縛ったような形の虫が群れ湧き、やがて蛙になって飛び去った。虫は毎年湧くので常元虫と呼ばれ、西念寺の北西にあたるその空き地は常元屋敷と呼ばれて、家を建てると祟るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。