移り住む先々で物が降り障子が燃える一家
どんな伝承か
北陸真報の十一月二十二日の記事として引かれた話。加賀国江沼郡大聖寺町の岩本磯衛は、妻と次女マキとともに同町耳聞山の斎藤基次郎方に同居していたが、磯衛の持ち物がたびたびなくなり、その品が空中から落ちてきたり、障子から急に火が出たりした。家主に同居を断られて同町の中村方へ移ると、そこでも同じ怪事が起きてまた断られ、鷹匠町の浜合方に移った。しばらく何事もなかったが、十八日からまた怪異が始まり、翌日大聖寺警察署の巡査が調べたところ、次女が神経の病からこうした振る舞いをして家の者が驚くのを喜んでいたと分かり、なくなった品もすべて懐に隠していたという。
原典より
もっとも紛失した物品はマキがすべて懐中していたということである。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。