古城の姫に招かれ衰え死んだ作助
どんな伝承か
越後国頸城郡の栢吉という村には、謙信の家臣本荘清七郎の居城と伝える古城の跡があった。その山の下の農家に使われる作助という男は、山奥へ薪を採りに通ううち、夜ごと出かけて朝に帰るようになり、目に見えてやせ衰えた。主人が問い詰めると、城山で幕を張って酒宴をする美しい女たちに招かれ、珍しい酒肴を振る舞われたと明かした。上座の姫はこの城の城主の娘で、前の世で夫婦の縁があった作助に、父が埋めた軍用金を譲るので他言せず毎夜通えと言ったという。作助は欲にかられて通い続け、ついに精気を奪われて死んだ。作助が以前に狸の穴を塞いだ仕返しだろうと言う人もいた。宝暦年中のことという。
原典より
其上欲心おこりて、かの金をとらばやとつかることをもわすれかよひしが、遂に神気を奪れ病死しける、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。