成高寺に残る新左衛門狐の詫び状
どんな伝承か
円了が『耽奇漫録』から引く、狐が書いたとされる文書の話。下野国宇都宮の東廬山成高寺には「狐の怠状」と題された宝物が伝わっていた。文面は、いま御祈禱のさなかにあるので退散する、今後この寺の内には少しも災いをしない、という誓いの言葉で、元禄十四年六月七日の日付に新左衛門狐と署名されていたという。円了は、文章にも筆跡にも狐らしいところはまったくなく、ある程度教育を受けた人間でなければ書けないものだと評し、狐が字を書いたとは信じられないとしている。
原典より
その中に、下野国宇都宮東廬山成高寺の宝物、狐の怠状と題するものがある。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。