寝殿を駆け回った六条皇后の霊狐
どんな伝承か
『扶桑略記』が伝える話。仁和四年、六条皇后が病に悩まされた。召しを受けて参内した相応和尚は当時六十歳、加持祈祷を三日三晩続け、そのあいだ座ったまま動かず、眠りもせず一口も食べずに祈り続けたという。四日目の明け方、皇后は大声で叫び、身をよじってのたうち回り、寝殿が倒れそうなほどであった。そのとき霊狐が斗帳の乾の隅から姿を現し、東西南北へ走り回ったので、太政大臣以下の臣下はみな恐れおののいた。和尚に解脱のまじないを唱えてもらうと、ようやく震動が収まって狐が離れ、皇后は快復し、褒美が下されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。