船を止めた浦口の男女二神
どんな伝承か
日本書紀の仲哀天皇八年正月の条には、浦に宿る神の話が見える。熊鰐が天皇の船を導いて山鹿岬を廻り、浦に入って水門に着いたところ、船がどうしても進まなくなった。天皇がわけを問うと、熊鰐は自分の落ち度ではなく、この浦の入口には大倉主という男神と菟夫羅媛という女神の二柱がいて、その神の御心によるのだろうと答えた。そこで天皇が祈り、菟田の人である伊賀彦を祝として祭らせると、船は進めるようになったという。浦もまた信仰の対象であったことを示す例とされる。
原典より
是の浦の口に男女二神有り、男神をば大倉主と曰ひ女神を菟夫羅媛と曰ふ。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。