杉の葉の鬼を焼く虫送り
どんな伝承か
稲を害する虫を追い払う虫送りは全国に分布し、火を燃やすものと鉦を叩くものとに大きく分かれる。害虫の発生は悪い霊のしわざと考えられていたため、この行事は悪霊を送り出すものと受け取られ、悪霊を人の姿に写した人形が用いられた。水沢の付近では明治の初めごろまで、七月二九日に杉の葉を束ねて大きな鬼をこしらえ、大勢でかつぎ上げて町の南の端から北の端まで練り歩き、そこで火をかけて焼き、虫を送り出したという。送り先が村境や川、海とされるのは、境や水が悪しきものを流し去る場と見られていたからである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。