玉石の市神が示す米価の吉凶
どんな伝承か
長井政太郎の報告によれば、山形県内には実に六十八か所に市神が祭られ、その大部分は城下町にあるが、船場や宿場でないところにも数か所見出されるという。多くは楕円形の自然石で、傘石を載せた六角柱のものや繭形のもの、木像をそのまま立てたものもある。左沢や大石田の市神は丸い玉石で、正月に若者がこれを持ち歩き、置かれた場所によって米価の上り下りを占ったとも伝える。祭神は市神地蔵と呼ぶ土地もあるが、市杵島姫を祭るものが多く、すでに神道神学の影響を受けている。市神祭は多く正月の初市に行われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。